『メスとパレットⅡ』新聞書評
●2003年11月15日(土)朝日新聞夕刊
消化器がんの権威
医師の迷い思い画文集につづる
消化器がんの権威、東京都立駒込病院の森武生院長(58)が、画文集『メスと パレットⅡ・
無影燈のかげ』(婦人之友社)を10月下旬に出版した。Ⅰの『外科医の春秋』に続く2冊目で、
日々がん患者に向き合っている医師の迷いや思いが率直に つづられている。
「一般に、患者のがんとの闘いは死の1カ月くらい前に終わっている。常識的な 医師なら、
それ以降はどう安楽にさせてあげるかに全努力を集中している」
数多く添えられた自筆のスケッチがあまりに美しいだけに、この病気の容易ならざる姿を伝
える文章が生々しい。(佐柄木俊郎)
●2003年11月15日(土)日本経済新聞朝刊
病院長でもある第一線の外科医が、医療現場での思いをつづったエッセーの第二集。 自ら
が監督を務める病院のラグビーチームの話からは、医療におけるチームプレーの大切さを説
く。がん告知など重いテーマを扱っても、ユーモアを込めた筆致がさわやかな読後感を生んで
いる。学会や手術指導で世界を駆け回る著者が描いた各国の風景が、挿絵になっている。
●2003年12月1日(月)毎日新聞朝刊
著者は東京都立駒込病院院長で、大腸がん専門の外科医だ。がん転移を防ぐ切除術を世
界を回って指南している。旅の合間に描きためたスケッチと旅日記15編、外科医の目で社会
を見つめた随筆20編を収めた。婦人之友社の中高年向け雑誌『明日の友』 の人気連載という。
「母が子を愛するように、医師として患者を愛したい」との信念が全編を貫く。一方で、まじめ
にやるほど赤字になる医療制度、患者をみとる際の苦い思いも率直につづる。
●2003年12月14日(日)朝日新聞朝刊
メスは手術用メス、パレットは趣味の風景画のため。消化器がん専門の名医の優雅な随筆
集かと思ったら、とんでもない。
大量の管につながれた病院死を、マスコミは「スパゲッティ症候群」と批判する。だが医師だ
って、瀕死の患者をわざわざ苦しめようとしているわけではない。のどが渇かない程度の水を
補給し、息を楽にし、最後の時間を吐瀉物や吐き気で苦しまないようにと、精一杯の努力をし
ているにすぎないのだ。
インフォームド・コンセントもそう。金と信仰と契約の観念に支えられたアメリカ的医療に、日本
の患者や家族や医師は、本当に耐えられるのか。なにか別の手があるはずだ。
朝、外来待合室を通ると、患者がいっせいに自分の顔を見る。その孤独な目が怖い。いつの
まにか、一つ手前の他の科の入り口から外来にもぐりこむ習慣ができた。繊細な心と率直な思
考力をもつ名医の怒りの文集というべし。 津野海太郎(編集者・和光大教授)
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