甘えるか、バネにするか? 駅ビル内という立地 弘栄堂書店吉祥寺店 営業課長 里見勝治さん


吉祥寺には、JR,京王井の頭腺、東京メトロ・東西線の3つの路線が乗り入れている。JR改札を出て、流れ
のままに駅ビルに。眼の前の短いエスカレータで2階へ導かれると、そこがもう、文化のまち・吉祥寺の入口
ならぬ、弘栄堂書店吉祥寺店である。本屋へ行くという目的意識がない人たちも吸収してしまう、千客万来の
この立地は、書店としての性格づけをあいまいにするリスクを秘めている。不特定多数の客をカバーしようと、
この店の品揃えもほんとうに多岐にわたる。それだけに、ほんものの本好きをにっこりさせる深さに欠けてい
るきらいが拭えないのだが、そんな取越し苦労を吹き飛ばしてしまうほど、この店は忙しい。 坪数130坪のこ
の店の前の店長は、雑誌を大量販売するカリスマ的存在として業界の有名人だが、その流れは脈々と受け
継がれ、この店に来れば大概の雑誌は手に入ると客が思ってくれている。その期待に応えなければならない。
実際、1坪あたりの雑誌の売り上げは全国でも屈指の存在だそうだ。

また、手帳の販売数が全国で一位 。年末などは手帳だけで1日50万円の売
り上げを記録する日もあるという。またとない、この立地をバネにして、本好き
も通りすがりの客も満足させる店に進化させていくには?
受けるもので手堅く売り上げを上げ、ベーシックなもので質を高めていきたい。
里見さんの答はオーソドックスで力強いものだったが、 その根底には出版不
況が続く中で、雑誌の回復基調が底堅い。 出版界の不況も底を打ったので
はないか?という、営業課長らしいシャープな分析と、店頭で客と相対する仲
間たちへの揺るぎない信頼があるようだ。

さて、元気なこの店を支えているのは、 落ち着きある年代の余裕のある女性
客。今回のインタビューに備え、里見さんも「婦人之友」を読み、骨のある文章
を読む必要性、習慣の大切さを改めて感じたという。電子媒体が猛威を振るっ
ても、吉祥寺では「本」が読まれていく、と確信できたそうだ。吉祥寺は、ジャズ
喫茶、ライブハウス、 ミニシアターなどが点在し、 音楽のまちとして全国区の
知名度を誇っている。また、漫画家がたくさん住んでいることでも知られ、まち
そのものをテーマとした作品も目立つ。 キャリアを紡いだ人たちにも暮らしや
すく、若者たちのサブカルチュアの発信地でもある。ほんとうに、ユニークなま
ちだ。このまちの住人でもある里見さんは、いま、個々の店のワクを越えた書
店のサークルづくりを進め、まちの新たな魅力づくりに書店が貢献しなければ
…と意欲を燃やしているようだ。
数年後どんな花が開くか楽しみは大きい。

  

 
   

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