テッラマードレ in 水俣に行ってきました!

2025年11月1日(土)〜2日(日)、熊本県水俣市にて、「テッラマードレ・ジャパン 2025 in 水俣」が開催された。
『婦人之友』11月号でもお知らせしたイベントで、「山と海を結ぶ流域文化、人と自然のつながり」をテーマに開催。1日目は「生産者会議」と題したシンポジウムやワークショップが行われ、2日目には国内外から豊かな生産品のマーケット、映画上映会が開かれた。
テッラマードレ(Terra Madre)は、イタリア語で「母なる大地」を意味し、世界各地の食の生産者や活動家が集う国際的な食の祭典・会議だ。
2004年から2年に1回、イタリア・トリノを中心に開催され、世界160カ国以上から農家、漁師、料理人、学者、生活者など食に関わる多様な人々が集う。国内版も自発的に行われ、今年は水俣が名乗りをあげた。
食の持続可能性や地域文化、生物多様性、気候変動への対応などさまざまなテーマにわたるイベントが行われた。
誘致した水俣の地域の特性や、農家生産者たちについては12月12日発売の『婦人之友』2026年1月号に。
『婦人之友』では来年、水俣の生産者にスポットライトを当てた記事を予定しているほか、今後さまざまな形での情報発信ができたらと、訪ねることになった。
現地では、著書『スローフードな日本!』などで知られ、日本に”スローフード”という考えを紹介したノンフィクション作家の島村菜津さんに同行させていただき、たくさんの方との出会いの時をもつことができた。

ホールには大漁旗。海外からの参加者も目を輝かせる
オープニングに ”ウェルカムみかん”
1日目、JR水俣駅から車で7分ほどの会場、水俣市総合もやい直しセンター「もやい館」には、300名以上の参加者が集まった(参加費5,000円 食事つき)。公共施設らしく華美な装飾はない建物だが、メインのホールには色とりどりの大漁旗が飾られ、華やかな雰囲気になっている。
オープニングにはDJ のオリジナルソングが流れ、次いでウェルカムドリンクならぬ「ウェルカムみかん」が振る舞われた。このみかん、2人で1つを分け合うというのも見ず知らずの参加者同士の連帯感を高める。
皆で何かを食べてイベントを始めようと提案したのは、水俣で「地元学」の取り組みを続けている吉本哲郎さんだと後に聞いた。「食」という、生きていくうえで不可欠な行為を共有することの大切さを実感する。

ウェルカムみかん。2人で1つを分け合う
その後はホール以外の各部屋でも勉強会やワークショップが行われ、思い思いに会場を移動できる時間となった。いずれも円形の通路に入り口が開かれ、参加者同士の交流が多く見られた。高校生・大学生などの若い世代や、台湾や韓国など海外からの参加者も多い。
シンポジウム「流域とともに生きる―アグロエコロジーが示す再生の道」では、さまざまなバックグラウンドの方が登壇。
隣席の参加者と参加の動機を共有するチェックインから始まったが、初対面とは思えない盛り上がりを見せていたことも印象的だった。当事者意識の高い参加者が多いことに加え、やはり、冒頭の「みかん」でつながった仲か。食の力は大きい。
魚の移動販売を営んでいた中村雄幸さんは「ただの魚屋なので、難しい話はしません」とユーモアを交えつつ、「不知火(しらぬい)海には食物連鎖の上層に位置する大型の魚がいないので、小・中型の魚がのびのびと育っておいしくなる」「網漁と違い、釣りは直前まで魚が自由に泳いでいるので感じるストレスが少ない。身の柔らかさが違う」と話す。

勉強会の様子。会場は終始アットホームな雰囲気
「スローフードとツーリズム〜「味わう旅」から地域の未来をつなぐ勉強会」では、冒頭に「五感を開くため」とギターの弾き語りが披露される。トークの合間には、話題にのぼった天然の塩や、いきなり団子(熊本県の郷土菓子。輪切りのさつまいもと小豆あんを生地で包んで蒸したもの)が振る舞われるなど、自由な雰囲気。
台湾の東部、台東(タイトン)からの登壇者は、「台東を感じてください」と会場をまわって、スプレーで台東産のスパイスで作られたフレグランスミストをまいた。終了時には登壇者同士が抱擁。短い時間ながらお互い通じ合うものがあったことが感じられた。
演壇などの用意はなく、文字通り参加者と登壇者がフラットだったことも距離を縮めたのだろう。
(文・写真/婦人之友社 座波佑成)
『婦人之友』では、本イベントの準備段階として8月に行われた会の様子を1月号で紹介、2026年の新シリーズをスタートする。皆さんにもぜひ、水俣の生産者と生産品に出会っていただきたい。




