ニワトリと卵と、息子の思春期

著者:繁延あづさ
価格:1,595円(税込)
サイズ:四六判
頁数:176ページ
ISBN:978-4-8292-0972-1

2021年11月30日発売


親なんて、いつも子どもにはかなわない

「ゲームの代わりにニワトリを飼わせて」。小6の長男の目的は卵を売りお金を得ること。一筋縄にはいかない養鶏、母子のいさかい、夫のリストラ、父子の関係性の変化など、ありのままを母としての葛藤と共に綴った1冊。

 

著者紹介

繁延(しげのぶ)あづさ
写真家。雑誌や書籍の仕事を行う傍ら、ライフワークである出産や狩猟に関わる撮影や、原稿執筆に取り組む。夫、二男一女と長崎市に暮らす。著書に『山と獣と肉と皮』(亜紀書房)『うまれるものがたり』(マイナビ出版)などがある。

 


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目次

序章 2017年 夏

  • <にわとり飼育計画書>
  • 傾きはじめた気持ち
  • 「オレに何が必要か、お母さんにはわからない」

 

第1章 ニワトリがやってきた

  • 初めて出会う養鶏家
  • ニワトリとの暮らしスタート
  • 烏骨鶏の産卵
  • わが家のあたらしい風景
  • 家の中も変わっていく
  • ペットじゃなく家畜なのだという
  • 家庭内別居
  • ついに卵が!

 

第2章 ニワトリのいる日々

  • 卵と出産
  • 卵からお金へ
  • 地域の人に卵を直配
  • カニのような人
  • お金が欲しい理由
  • ニワトリの死
  • 生き物としての体
  • シーズンⅡはじまる
  • 母と子になっていく
  • 人間と動物の間で
  • なぜニワトリだったのか
  • お金を生み出す活動

 

第3章 “食べ物”は “生き物”

  • 長崎移住
  • 猟師との出会い
  • 見え隠れする必然性
  • 舞いこんできたキジ
  • これは私の食べ物だ
  • 命の取り扱い
  • ニワトリを捌く
  • 三度目は手が覚えていた
  • 命あるもの

 

第4章 家族、この儘ならぬもの

  • 夫のリストラ
  • 長男の自主休校
  • 子どもたちの共同養鶏
  • 父と息子
  • コロナ禍のわが家で
  • 父親殺し
  • 母と息子
  • 計画的家出
  • 母親殺し
  • 母、儘ならぬもの
  • 少し死ぬこと

 

あとがき

<本文より>

 

家に帰ると、机の上に手書きの〈にわとり飼育計画書〉なるものが置いてあった。隅っこには小さく〈飼いたい理由 卵がとれるから〉とまで書いてある。まずい。展開が早すぎて、こっちがどう出るか考えるヒマもない。

 

ある日、末っ子が「コッコになまえつけたい。どれがだれかわかるように」と言った。すると、長男がすかさず「名前はつけない。ペットじゃないんだよ。家畜なんだ」と抑揚もなく言った。

 

長男は世話をしながらニワトリたちを眺め、発見したことや気づいたことを口にしていた。幼いころは子に教え、成長とともに一緒に疑問を持ったり発見したりしたけれど、知識はだんだんと息子のほうが上回ってきていた。

 

息子は最初から「最後は絞めて、できれば捌いて食べたい。できるかわかんないけど」と言っていた。(略)卵を産んでもらい、最後は食べるとなれば、それこそまさに経済。経済とは生産、分配、消費の流れをつくる活動のこと。無駄なく滞りなく流れるように――。長男にはそんなビジョンがあるのかもしれない。

 

精肉を終えると、私は急に料理への意欲がわいてきた。レバーとハツは焼き鳥に、モモは照り焼きに、ガラはおでんになった。脚はラーメンスープにすると濃厚な出汁が出た。肉は噛む程に出てくる旨みがあった。噛むことが幸せな行為みたいにほおばった。


 

 

 

 

読者の感想

  • ものすごく面白かった。そしてとてもちゃんと生きておられるなと思いました。息子の思春期をいかにのりこえるか、どの親にとっても大変なことですが、このご長男のすごさ、オリジナリティ!!さすがこの親の子どもさんです。(兵庫県・SRさん・50代)

 

  • 私もペットとして、ニワトリとチャボを飼っているので、同感するところもありひきこまれるように一気に読みました。姉が友の会員で連載は知っていましたが、本になってくれてとても良かったです。(北海道・KKさん・60代)

 

  • 母親と息子の関係。親としての関わりと、一人の人間としての関わりと…。私の息子はまだ2歳と1歳で幼く、思春期をむかえた姿は全く想像ができないのですが。いろんな葛藤がありつつも、形を変えながら、家族でいるのだな、と思いました。「ニワトリを飼う」決めたら実現にしか向かっていかない長男さんの意思の強さ、あこがれます。親としては大変そうですが。(神奈川県・KAさん・30代)

 

  • 『婦人之友』を読んで、その後がとても気になっていました。長男、次男、長女と3人の子どもとのかかわりや、父、母の対応など、どこを読んでみてもとても素直なことばで書かれていました。死にそうになったニワトリ(はじめのところ)の命の表現や、子どもたちの様子も、自分がこの場所にいるような気持ちで読みました。泣きそうになってしまいました。楽しく、また、考えながら、次々と読みすすめました。この先も、知りたくなりました。ぜひ、パート2も待っています。(北海道・YHさん・60代)

 

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