『メスとパレットⅣ』刊行にあたり 第3回

『メスとパレット』の著者 森 武生を師とあおぐ、岩崎 善毅(よしあき) 先生(都立駒込病院胃外科部長)との、世界旅の思い出の3回シリーズの第3回目。

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岩崎 善毅 先生(左)と『メスとパレット』著者の森 武生 先生(右)

b2588_obi2016年4月20日発売
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: 『メスとパレット』の一巻(Ⅰ)を出したのは1996年、なんと20年前。この20年に何が変わったかというと、私というより、世の中が変化したね。当時は患者さんには、癌っていうことは、絶対言わない時代だったから。今は、逆に全部言わないといけない、言い過ぎるくらいね。

 

岩崎 : たしかに、医学を取り巻く環境は、変わってきましたね。

 

: ある意味、告知をしたのだから、外科医の支える部分の責任は減ってきたと思われがちだね。でもね、告知をしたからこそ、したからこそだよ、患者さんと家族を支えてあげなくちゃいけないと思うよ。日本は宗教の役割があまりないから外科医が支えなくちゃならない。たいへん。

 

岩崎 : 僕は30年前に大阪から出てきて、その医者の卵が初めて見たものが先生だったんですよ。そして30年、先生のもとで経験を積んだ。厳しく指導をしてくれるし、そこまで言われるか、みたいなこともあったけど、結局は僕たち、いや、それよりなにより、患者さんに、森先生はやさしいんですね。

 

: うふふ。(すぐ真剣な表情に、、、)

 

岩崎 : 先生の患者さんへの接し方は、結構ぶすっとした言葉もあるんですが、その中にあたたかい心が溢れていて、患者さんにもそれが伝わり元気になる、家族も皆、ここまで考えてくださっているなら信頼できる、信頼しようと心が決まり、落ち着けるんですよ。

 

: 外科はあらっぽいんじゃないか、と思われるけど、外科ほど、やさしさが求められるところはないよね。

 

岩崎 :そう、やさしさが必要な科なんですよね。
『メスとパレット』の四巻通じてながれているのは、外科医としてのやさしさ、僕はそう思いますよ。本の中にもこんなところがありますよ。いいですか、エルサレムにいらした時に月を見て、『患者さん元気かなあ、なんて、、。「大丈夫だよ、みんな元気」って言ってくれたかに思えたのは、甘えかなあ、、』というところや、二度目の肝転移の患者さんに大好きな桜を見せたくて一緒に桜を見ながら、団子食べた。最後の花見だと分かっていた。彼は何回も桜を見上げていたが、泣かなかった。、、、まだまだありますよ。
患者さんには優しくしてあげなさいと言うことは、森先生から教わったことですよ。
(今回で旅談義は終了です)

 

 

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