「終活」よりも「今活」で、毎日をいきいきと
[モノと暮らしのストーリー・井田典子さん 02]
整理収納アドバイザーとして活躍されている井田さん。テレビや雑誌などで活躍する傍ら、個人のお宅への「片づけ訪問」も精力的にされています。ご自身の暮らしのステージを振り返ってのお話や、日々の暮らしのなかで大切にされていることを伺いました。
(文・鈴木 裕子/写真・小川 朋央)
「終活」よりも「今活」で、毎日をいきいきと
井田典子さん(整理収納アドバイザー)
昨年、新たな本(『片づけは整理9割、収納1割』)をまとめるにあたり、これまでの自分の片づけを振り返って思いました。自分を大事にするために家を整えるんだな。って」
そんな井田さんがいま、暮らしの中で大切にしているのは、眠る前に「頭を空っぽにすること」。以前ほどではなくても、日々やるべきことはたくさんあるので、どうしてもやり残したことが出てきます。
「それはスマートフォンのメモ帳に書き留めておしまい。毎日のお金の出し入れについても、クラウド家計簿「kakei+」に数字を打ち込んだら、おやすみなさい。お金をたくさん使ってしまった!という日もありますけど、使ってしまったものはしょうがないので、気にしません(笑)。
そうやって頭の中を空っぽにすると、ベッドに入って3分で眠れます。熟睡できるので朝もスッキリ起きられる。実に健やかな毎日を過ごしています」
もう一つ、井田さんが大切にしているのは、「人に会うこと」。
「私は、羽仁もと子先生の『人はいつからでも新しくなることができる』という言葉が大好きなんです。それには、できるだけ人と会い、言葉を交わすこと。それが、私を新しくしてくれる唯一の方法だと感じるんです。
人って、自分一人では変われない。客観的な目が必要なんです。本を読むことも勉強になるけれど、やっぱり人と直接会って話をするほうが刺激になりますし、自分を新しくするきっかけをもらえます」
井田さんは、「友の会」(※編集注:『婦人之友』愛読者による団体)の活動に積極的に参加。
自分の家で会を開くこともしょっちゅうで、みんなで交わりながらさまざまなことを学んでいます。
そして、なにより井田さんを活性化させるのは、「誰かのためのお片づけ」。
「片づけって、必ずよくなることが約束されているんです。最初は、ものが多くて大変!と思っても、やれば必ず改善されます。そんな現場に向かうことが、私にとっては最高の幸せなんです。
みなさん、片づけをしながらさまざまなことを話してくださいます。ものを整理するって、心を整理することなんですね。思いの丈を全部吐き出す方もいらっしゃいます。それを聞きながら一緒に片づけることは、ひょっとするとその方にとって一種のセラピーになっているのかもしれません。自分がお役に立てる場所があるだけで、本当にありがたく、幸せなことだなと思っています。
私の場合、終活よりも「今活」。毎日いきいきと暮らして『いまが最高に幸せ』と思えたら、何も言うことはありません。何なら、お片づけの現場で最期を迎えたいくらい(笑)」
今日も、井田さんはお弁当とエプロンを持って、元気に片づけ訪問に向かいます。
今回ご紹介する井田典子さんのおすすめ品はこちら。
【鍋帽子®︎】
1970年以降、環境問題、省資源から「適量の生活」を目指して、全国各地の友の会で「鍋帽子」を作り、鍋帽子を使った調理方法を積み重ねてきました。とくに、被爆地広島の友の会では「原発をふやさない」との強い思いで熱心に取り組みました。
井田さんと鍋帽子との出会いは、30年ほど前。広島友の会の会員である母親から、送られてきたのだそうです。
「それまでも、母から鍋帽子についての話は聞いていて、とてもよい製品だなと思っていたのですが、いざ届いてみたらびっくり。大きくて、正直、『こんなにかさばるものを、どこに置こう……』と戸惑ったことを覚えています。
布製で、中に綿が入っているから、なんとなく押し入れがいいんじゃないかなと思って、座布団の上に鎮座させたら、なかなか使わない。やっぱりキッチンで使うものはキッチンに置かなくちゃダメとわかり、吊り戸棚の中に移動させたら、途端に使用頻度が上がりました。今では、煮込み用(大)とご飯炊き用(小)の2つが大活躍しています」
使い方は、とても簡単。火から下ろしたばかりの熱々の鍋に被せておくだけ。数十分〜数時間後、味がじんわりしみ込んで、ふっくらおいしい料理ができあがります。朝、出かける前に調理をして鍋帽子を被せておけばOK。帰宅後、すぐに食事ができます。
「ガスや電気の使用量を最小限に抑えられてCO2の削減になりますし、火からは下ろしているのでキッチンから離れても安心。仕事で忙しい人にも、自宅で自分の時間をゆっくり過ごしたい人にもオススメです」
井田さんには、鍋帽子の特別な思い出があります。2017年、テレビの仕事でスウェーデンの家庭に滞在して、掃除・片づけ術を伝授することに。井田さんは、「鍋帽子を作って、お土産として持っていこう」と思い立ちました。
「私、お裁縫も編み物も得意ではないんです。でも、スウェーデンの人たちは手仕事をとても大切にしていると聞いて、ならば、と、鍋帽子を2つ作って持って行きました。
あちらは寒いこともあって煮込み料理が多いんですね。でも、それを温めるのはもっぱらヒーターやストーブの上で、『鍋に帽子を被せるという発想はなかった!』って。手作りだということも、とても喜ばれたんです。
実用の中に美があるーー。ウィリアム・モリスの言葉なのですが、鍋帽子もまさにそれ。スウェーデンの人たちに喜んでもらえたのは、鍋帽子は実用的であり見た目も可愛らしいからなのだな、魂のあるものは世界共通で暮らしの中で役立ち、人々に愛されるのだなと実感し、とてもうれしかったことを今でも昨日のことのように思い出します」
※商品データ
【鍋帽子®︎と『魔法の鍋帽子®︎』のセット】
書籍『魔法の鍋帽子®︎』(婦人の友社編/B5版/128頁)
鍋帽子®︎(ダンガリーグレー)
(2025.03.05)
ご紹介した商品は、弊社ホームページでもお求めいただけます。
ぜひご覧ください。
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井田典子 いだ のりこ
横浜友の会(『婦人之友』読者の集まり)会員。整理収納アドバイザー。1960年広島市生まれ。整理収納、時間の使い方などのシンプルライフを『婦人之友』誌上で紹介。各家庭の暮らしに寄り添った「片づけ訪問」、テレビや雑誌など各メディアで活躍するほか、全国各地で行う講演会も好評。著書に『片づけは整理9割、収納1割』など。