「音楽は、暮らしと地続き」 ―舘野泉さんの暮らしを彩るモノ―

味わいあるグランドピアノは亡くなった妹さんが大切にしていたもので、50年来の相棒。

 

クラシック界のレジェンドとして、87歳になる今も各地でコンサートを行う舘野泉さん。これまでの演奏会で訪れた地で出会った、様々な“お気に入り”に元気をもらっていると話します。

生まれ育った東京・自由が丘のご自宅を訪ね、大切な思い出の品々を見せていただきました。

 

【プロフィール】

ピアニスト・舘野 泉

たての いずみ:1936年東京生まれ。世界各地で演奏活動を行う。2002年に脳溢血で倒れ右半身不随となるも「左手のピアニスト」として活動を再開。尽きることのない情熱で、独自のジャンルを切り開いた。2023年には全国各地で米寿記念演奏会を開催。著書に『ハイクポホヤの光と風』『舘野泉フォトストーリー』など多数。

 

 

各地で出合った、大切な思い出と

 

2002年、館野さんは脳溢血で右半身不随に。その後「左手のピアニスト」として復帰され、東京のご自宅と、妻の故郷であるヘルシンキ(フィンランド)の家を拠点に、精力的な活動を続けています。「90歳まで仕事の予定が決まっていてね。そんなに生きているかわからないけど」。

 

昨年、妻が亡くなって完全にひとり暮らしに。生活を改革している途中、と舘野さん。日本での生活が多くなるため、フィンランドのご自宅から少しずつものを運んでいるそう。

 

世界各地の置きものたち。

 

お気に入りの本が並ぶ書棚には、世界中で演奏旅行をした際に現地で購入したユニークな置きものたちが。鳥や動物など、ちいさな生き物たちはどれも愛嬌ある表情や佇まいが魅力的です。

 

 

新鮮な素材に触れて料理を楽しむ

 

料理を始めたきっかけは、妻のダイエット!?

 

自宅では買い物も料理もご自身でこなしています。普段は使い込まれた道具の並ぶキッチンで、新鮮な素材を調理する舘野さん。

夜10時になるとピアノを弾き終え、晩酌をしながら夕食をつくり、ニュースを見ながら食べるのが、1日の終わりのほっとする時間といいます。

 

お気に入りの器たち。フィンランドと日本のものが混在しても、しぜんとなじむ。

 

 

自分を閉じずに開いて――音楽は続く

 

 

1日3時間ピアノに向かい、練習を欠かさない舘野さん。

「自分の中では音楽家であることを特別と思っていません。子どもの頃から泥だらけになって遊んで、ピアノも弾いて、一度も音楽が嫌になったことはありません。ですからすべてがしぜんにつながってきたこと。

自分を取りまく世界を閉じないで開いて、いつでも刺激を受けて、生き生きとした命に触れる。それが元気に音楽をやってこられた理由かもしれません」。

 

 

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2024年1月発売の「暮らしのお助け道具と知恵130」では、フィンランドでの暮らしの様子、大好きな詩集の話などもご紹介。ユーモアたっぷりの舘野さんの暮らしとそれを彩る道具たちを、ぜひご覧ください。

 

「音楽は、暮らしと地続き」(文=原 典子/撮影=鈴木慶子)

 

 

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